★外食産業を動かす人々
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KYOTAファクトリー 代表取締役 佐々木 強太 氏
■10月5日号の主な内容
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老舗飲食店の事業承継問題を考える
絶好調Gが宮城・仙台《元祖 炉ばた》継ぐ 街の資産をどう守っていくのか
「できたら、吉田さんがやってくれたらいいんですけどね……」
燗をつけながら、独り言とも、誰かに話しかけているとも付かないような小さな声で、女将さんがぼそっと、呟いた。
その女将とは、宮城・仙台に70年前に創業した、炉端発祥の店と言われる「郷土酒亭 元祖 炉ばた」の暖簾を引き継いで47年、二代目の加藤和子さんのことだった。
実は「郷土酒亭 元祖炉ばた」は、2020年6月末をもって70年の歴史に幕を下ろすことを決めていた。原因は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、仙台一の繁華街である国分町に人が全く寄りつかなくなってしまったこと、そして、大将である加藤潔さんの健康問題などもあり、2人で「もう潮時か」と考えての結論だった。「郷土酒亭 元祖 炉ばた」の斜め向かいの飲食店から、仙台初のコロナ患者が出てしまったこともダメージが大きくなった一因だった。
女将が呟いた相手である「吉田さん」とは、東京・新宿を中心に居酒屋業態のドミナントを構築する絶好調グループ(東京・新宿)代表の吉田将紀さんのことだ。「炉端発祥の店を見ておこう」と、専務の松村康夫さんとともに10年ほど前に訪れてから、幾度となく通っていた店が「郷土酒亭 元祖 炉ばた」だった。
仙台に自社から独立したスタッフの店舗があることから、吉田さんは「その訪問時には必ず顔を出していた」といい、松村さんも接客のコンテストである「S1サーバーグランプリ」の全国大会の前に、「原点に返って自分の接客を見直そう」と訪れたり、「自分の節目の時を中心に通っていた」という。
吉田さんと松村さんは加藤さん夫妻から直接手紙をもらい、その思い出深い「郷土酒亭 元祖 炉ばた」が6月末で閉まることを知った。店が閉まる前に、もう一度、瞼に「お父さん(大将)やお母さん(女将)の勇姿を刻みつけよう」と、6月15日、総勢4人で店を訪れた。馴染み深いカウンターを陣取って、「切ない気持ちで飲んでいた」と、吉田さんは述懐する。
「郷土酒亭 元祖 炉ばた」では、女将の和子さんがカウンター内に座って炉の番をし、大将の潔さんが料理を作る役割。冒頭の呟きは、その時に女将が吉田さんらに向けて発したものだった。
女将の呟きを聞いた二人は、その場では何も答えず、黙り込んでいた。冗談ではないことなど、その場の空気ですぐにわかった。もちろん、軽く答えられる案件ではない。女将さんの呟きはそばにいた大将にも聞こえていた。……
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